生命の炎から絆へ -BGMから見る甲21号作戦のラストシーン-

マブラヴオルタネイティヴ・エピソード9「終わりなき戦い」前半の山場である甲21号作戦の伊隅大尉との別れのシーンにおける、BGMを重視した自己流の演出の解釈をしてみた。

 

秘匿回線での旗艦最上と凄乃皇の通信シーンでまず流れるのは「生命の炎」。
夕呼先生との信頼し合った上司と部下、明かせない情報もあったのを互いに理解した上である意味相棒と呼べるような最後のやり取りが描写される。
オーケストラの厚みのある音による悲しさと共に信念や強さを感じさせる曲調が、軍人としての伊隅大尉の決意を表していると感じた。
それによってプレイヤーも軍人白銀少尉として伊隅大尉を見送る心構えになる。

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続いて武との通信で「絆」が流れ、先程までの「生命の炎」から空気が変わる。
ピアノの音と優しい曲調が、軍人としての伊隅大尉ではなく伊隅みちるという個人の優しさを感じることになる。
武との会話も、武と純夏との関係を心配したり最後に心に浮かぶのは姉妹や正樹だというみちる個人の想いを吐露している。

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画像はクロニクルズ告白から


軍人(公の自分)としての覚悟をして、そのまま見送る流れを意識していたプレイヤーはここでその覚悟を剥ぎ取られ、想定していなかった個人としての気持ちで伊隅みちるという個人を見送る状況に立たされる。
この落差というか2段構えの構成によって、普通に別れのシーンに入るよりも、不意打ち的に心に刺さる演出になったと私は感じた。


こういった二段構えの不意打ちや裏切りの展開は、前シリーズである「君が望む永遠」等アージュ作品では珍しくない手法であるが、このシーンはそのミニマム版であると言えるかもしれない。

 

余談ではあるが、この後に伊隅大尉と他の隊員との通信が回想という形で挿入され、そこでは再び「生命の炎」が流れるが、これによってプレイヤーは衛士としての心構えに戻されるという演出意図だと思う。
そして「chronicle告白」では「絆」は流れず通信シーンは「生命の炎」で通されているが、これは武(プレイヤー視点)ではなく伊隅大尉視点によるものだからだろう。こちらはまた別の機会に同様の視点で語ってみたい。